ノイズキャンセリング(ノイキャン)は、イヤホンやヘッドホンに付いたマイクで周りの騒音を拾い、その騒音と逆の形の音を重ねて打ち消す機能です。電車やバス、飛行機の中のような「ゴーッ」という低い音を小さくするのが得意で、音楽を小さな音量でも聞きやすくなります。

一方で、すべての音が消えるわけではありません。高い音は残りやすいのが特徴です。周りの音を聞きたいときは、反対に周囲の音をマイクで取り込む「外音取り込み」に切り替えます。この記事では、2つの機能の仕組みと使い分けを、メーカーの説明をもとに整理します。

ノイズキャンセリングの仕組み

ソニーのウォークマンの取扱説明書では、ノイズキャンセリングの仕組みを次のように説明しています。

  1. ヘッドホンに内蔵したマイクで、周りの騒音を拾う
  2. ノイズキャンセリングの回路が、その騒音の波形を分析する
  3. 騒音と逆位相(山と谷が逆になった形)の音を作って重ねる
  4. 2つの音が打ち消し合い、耳に届く騒音が小さくなる

音は空気の振動の「波」です。同じ大きさで山と谷が逆の波を重ねると、打ち消し合って平らに近づきます。この性質を使って、騒音だけを聞こえにくくしているわけです。

製品によっては、イヤホンの外側と内側の両方にマイクを付けて、外から来る騒音と、耳の中に入ってきた騒音をそれぞれ拾う方式もあります。ソニーのヘッドホンの開発者インタビューでも、外側と内側の2つのマイクで集めた騒音から逆位相の音を作る仕組みが紹介されています。

得意な音・苦手な音

ソニーの取扱説明書では、ノイズキャンセリングは主に低い周波数帯域のノイズに有効で、すべてのノイズを打ち消すわけではないと説明されています。

音の例 効きやすさの目安
電車・バス・飛行機の走行音、エアコンの音など、低く続く音 効きやすい
人の話し声 製品によって差がある
食器のぶつかる音、アナウンスのチャイムなど、高い音 残りやすい

古いウォークマンの説明書では、高い周波数帯域のノイズには効果がない、とまで書かれています。製品の世代や方式で効き方は変わりますが、「低い音は小さくなり、高い音は残る」と考えておくとよいでしょう。

また、耳とのすき間も効き方に大きく関わります。ソニーの説明書では、イヤーピースが耳にフィットしていないとノイズキャンセリングの効果が得られにくいため、合うサイズを選んでしっかり装着するよう案内しています。イヤーピースや耳あて(イヤーパッド)で物理的に音をさえぎる効果と、ノイズキャンセリングの効果が合わさって静かになる、と考えるとわかりやすいでしょう。

外音取り込みとは

外音取り込み(ソニーでは「アンビエントサウンドモード」と呼んでいます。メーカーによって名前が違います)は、ノイズキャンセリングとは反対に、マイクで拾った周りの音を、イヤホンから聞こえるようにする機能です。イヤホンを着けたままでも、アナウンスや話しかけられた声に気づきやすくなります。ソニーのイヤホン「WF-C700N」のように、取り込む音の量を段階的に調整できる製品もあります(同機は20段階)。

ただし、ソニーの説明書では、外音取り込みはすべての音を聞き取れるようにする機能ではないとしています。周りの状況や、再生している音の種類・音量によっては、周りの音が聞こえないこともあります。車や自転車の通る道など、周りの音が聞こえないと危ない場所では、十分に注意するよう案内されています。

2つの機能の違い

ノイズキャンセリング 外音取り込み
目的 周りの騒音を小さくする 周りの音を聞こえやすくする
マイクの使い方 拾った騒音を打ち消す音を作る 拾った音をイヤホンから流す
向く場面 電車・バス・飛行機での移動、集中したい作業 駅のホーム、レジでの会計、人と話すとき
注意点 低い音以外は残る。静かな場所では効果を感じにくい すべての音が聞こえるわけではない。道路では特に注意

どちらの機能も、対応するイヤホン・ヘッドホンでしか使えません。製品の仕様表や説明書で「ノイズキャンセリング」「外音取り込み」に対応しているかを確認しましょう。

場面ごとの使い分け

どちらのモードにするか迷ったら
  1. 周りの音(車、アナウンス、人の声)に気づく必要がある場所?

    • はい → 外音取り込みに。道路を歩くときや自転車の近くでは、音量を下げるか、イヤホンを外すことも考えましょう。
    • いいえ → 次へ。
  2. 電車・飛行機・エアコンなど、低く続く騒音が気になる?

    • はい → ノイズキャンセリングが向いています。
    • いいえ(静かな部屋など) → どちらもオフでも十分です。オフにすると電池が長持ちする製品もあります。

移動中(電車・バス・飛行機)

乗り物の低い騒音は、ノイズキャンセリングが得意な音です。騒音が小さくなるぶん、音量を上げすぎずに音楽や動画を楽しめます。ただし、乗り換えのアナウンスや駅のホームでは、外音取り込みに切り替えると安心です。旅行に持っていく充電まわりの準備は旅行の充電セット|充電器・ケーブルを減らす順番でまとめています。

勉強・作業中

カフェや図書館、家のエアコンの音などが気になるときに、音楽を流さずにノイズキャンセリングだけを使う人もいます。ソニーの開発者インタビューでも、音楽を再生せずに耳栓のように使う方法が紹介されています。

歩いているとき

道路では、車や自転車の音に気づけることが大切です。外音取り込みを使っても、すべての音が聞こえるわけではありません。周りの安全を優先し、必要ならイヤホンを外しましょう。

気になりやすい現象

ソニーの説明書には、ノイズキャンセリングを使うときに起こりうる現象として、次のようなものが挙げられています。

  • かすかな「サー」という音:ノイズキャンセリングが動いているときの動作音で、故障ではない
  • 静かな場所で効果を感じない、かえって音が気になる:その場合はノイズキャンセリングをオフにする
  • マイクをふさぐと効果がなくなる:手や髪、帽子などでマイク部分を覆わない

聞こえ方の感じ方には個人差があります。気になる場合は、製品の設定アプリなどで効き具合を調整できるかを確認してみてください。

イヤホンを選ぶときのポイント

ノイズキャンセリング付きのイヤホンを選ぶときは、機能の有無だけでなく、次の点も確認しましょう。

  • 耳に合うか:イヤーピースのサイズが合わないと、ノイズキャンセリングも外音取り込みも十分に働かない。付属のイヤーピースのサイズ数を確認する
  • 外音取り込みの有無:ノイズキャンセリングと外音取り込みの両方に対応しているかを、仕様表で確認する
  • バッテリー:ノイズキャンセリングをオンにしたときと、オフにしたときの再生時間を仕様表で確認する

どこで使うかから考える選び方は、イヤホン選びは、使う場所から。購入前に整理したい3つのことで紹介しています。

参照情報

以下はいずれも2026年10月15日確認。