Bluetoothイヤホンで動画やゲームを楽しんでいると、口の動きや効果音が、映像より少し遅れて聞こえることがあります。これは故障ではなく、Bluetoothで音を送る仕組みそのものに、少し時間がかかるためです。完全にゼロにはできませんが、低遅延モード(ゲームモード)を使う、再生側の機器で音のタイミングを調整する、接続環境を整えるといった方法で、気になりにくくできます。
この記事では、ソニー、オーディオテクニカ、任天堂、Bluetoothの規格団体(Bluetooth SIG)の公式情報をもとに、遅れの理由と対策を整理します。
なぜ音が遅れるのか
ソニーのテレビのヘルプガイドでは、Bluetooth機器を使ったときに映像と音が合わない理由を「Bluetoothの性質によって音が遅れるため」と説明しています。
一般に、Bluetoothで音を聞くときは、再生する機器(スマホなど)が音のデータを圧縮して無線で送り、イヤホン側で受け取って元に戻してから鳴らします。この「圧縮して、送って、戻す」流れに時間がかかるため、有線のイヤホンより音が少し遅れます。
遅れが気になりやすいのは、次のような場面です。
| 場面 | 気になりやすさ | 理由 |
|---|---|---|
| 音楽を聴く | 気になりにくい | 映像と合わせる必要がない |
| 動画を見る | やや気になる | 口の動きと声のずれに気づきやすい |
| ゲームをする | 気になりやすい | ボタンを押してから音が鳴るまでのずれが、操作に影響する |
対策1:低遅延モード(ゲームモード)を使う
イヤホンによっては、音の遅れを小さくする専用のモードを備えたものがあります。名前は製品によって違い、「低遅延モード」「ゲームモード」などと呼ばれます。
たとえばオーディオテクニカのワイヤレスイヤホン「ATH-SQ1TW」には、「音と映像のずれを抑える低遅延モード」があり、スマートフォンやタブレットで動画やゲームを楽しむときに、音の遅延の少ない再生ができると紹介されています。一方で、障害物や電波の状況によっては、Bluetooth通信が途切れやすくなる場合がある、と注意書きもあります。
遅れを減らすモードは、そのかわりに接続の安定性などに影響する場合がある、と考えておくとよいでしょう。使っているイヤホンにこうしたモードがあるかは、取扱説明書や専用アプリで確認できます。
対策2:再生する機器でタイミングを調整する
テレビなど、再生する側の機器に、音の出るタイミングを調整する設定がある場合があります。ソニーのテレビでは、「A/V同期」の設定で、映像と音の出力タイミングを調整できると案内されています。
スマホのアプリやゲーム機、テレビの設定に「音声の遅延」「A/V同期」「リップシンク」などの項目がないか探してみましょう。
対策3:接続の環境を整える
任天堂は、Nintendo Switchで使うBluetoothオーディオ機器に遅延がある場合の対処として、次のような手順を案内しています。
- 本体を最新のシステムバージョンに更新する
- 本体を再起動する
- Bluetoothオーディオ機器の電源を入れ直し、十分に充電されていることを確認する
- Bluetoothオーディオ機器を本体に近づけ、間に金属や電子機器を置かない
- Bluetoothオーディオ機器のメーカーがすすめる対処方法を試す
- 機器をもう一度登録(ペアリング)し直す
それでも改善しない場合は、別のBluetoothオーディオ機器をつなぐか、有線のヘッドホンを使う方法が挙げられています。ゲーム機以外でも、ソフトウェアの更新、再起動、機器を近づける、といった基本の確認は役に立ちます。
コーデックと「音質優先・接続優先」の設定
「コーデック」は、Bluetoothで音を送るときの圧縮のしかたのことです。SBC、AAC、LDACなど、いくつかの種類があり、再生する機器とイヤホンの両方が対応するものの中から使われます。
ソニーのウォークマンには、Bluetooth接続時に「音質優先」「標準」「接続優先」などを選べる設定があり、接続が不安定なときは「接続優先」を選ぶよう案内されています。ソニーのヘッドホンのアプリにも、音質と接続の安定のどちらを優先するかを選ぶ設定があります。
ただし、こうした設定の説明は「音質」と「接続の安定性」についてのもので、遅延をどれだけ減らせるかは示されていません。音の遅れを減らしたいときは、まず対策1〜3を試し、コーデックの設定は「音が途切れる」ときの対策と考えておくとよいでしょう。
新しい規格「LE Audio」
Bluetoothの規格団体であるBluetooth SIGは、新しい音声の仕組み「LE Audio」を策定しています。Bluetooth SIGのLC3の解説では、LE Audioが作られた背景の一つとして、より低い遅延への要望が挙げられています。LE Audioでは、新しいコーデック「LC3」が使われます。
LE Audioを使うには、再生する機器とイヤホンの両方が対応している必要があります。対応しているかは、製品の仕様表で確認しましょう。
確認の順番
イヤホンに「低遅延モード」「ゲームモード」がある?
- ある → オンにする。音が途切れるようなら、使う場面を選ぶ。
- ない → 次へ。
再生する機器に、音のタイミングを調整する設定(A/V同期など)がある?
- ある → 映像に合うように調整する。
- ない → 更新・再起動・機器を近づけるなどを試し、それでも気になるなら有線のイヤホンも検討。
イヤホンを選ぶときのポイント
動画やゲームでよく使うなら、次の点も確認しておきましょう。
- 低遅延モードがあるか:製品の仕様表や説明ページに書かれていることが多い
- 使う機器との相性:ゲーム機など、Bluetoothオーディオへの対応状況が機器ごとに違う
- 有線でも使えるか:遅れを避けたい場面だけ有線で使えると便利
使う場所から考えるイヤホンの選び方はイヤホン選びは、使う場所から。購入前に整理したい3つのこと、ノイズキャンセリングの仕組みはノイズキャンセリングとは?外音取り込みとの違いと向く場面で紹介しています。
参照情報
以下はいずれも2026年10月18日確認。
- ソニー「映像と音のずれが気になる(テレビ ヘルプガイド)」(英語)
- ソニー「Bluetooth接続時の再生品質を設定する(ウォークマン NW-A10シリーズ ヘルプガイド)」
- ソニー「Changing the priority setting of the BLUETOOTH connection(Headphones Connect ヘルプガイド)」(英語)
- オーディオテクニカ「ATH-SQ1TW」
- 任天堂「Bluetooth Audio Device Has a Delay」(英語)
- Bluetooth SIG「A technical overview of LC3」(英語)
