地震で家具が倒れないようにする方法のうち、最も効果が高いのは、L型金具などで家具を壁に直接ネジで固定する方法です。壁に穴を開けられない場合は、ポール式(突っ張り棒)と、ストッパー式またはマット式を組み合わせるのが基本です。ストッパー式やマット式だけでは、大きな家具には効果が小さいとされています。
この記事では、東京消防庁の「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」(2024年1月発行)とよくある質問をもとに、器具の種類と効果、選び方、取り付けの注意点を整理します。
器具より先に:家具の置き方
ハンドブックは、器具を付ける前に、家具の置き方を見直すよう勧めています。
- 生活する部屋に家具を置かない:納戸やクローゼット、作り付けの収納にまとめる
- 寝る場所・座る場所の近くに置かない:置く場合は背の低い家具にするか、倒れても体にかからない向きに置く
- 出入口や避難通路をふさがない:倒れた家具でドアが開かなくなったり、避難のじゃまになったりしないようにする
- 重いものを下に入れる:重心を低くすると倒れにくくなる
東京消防庁のよくある質問では、対策が必要な家具の高さや重さの基準はないとしています。家具の形や中身、地震の揺れ方によって、どの家具が倒れるかは一概に言えないためです。すべての家具に対策するのが最も安全ですが、難しい場合は、重い家具・背の高い家具から順番に対策するよう案内しています。
器具の種類と効果
ハンドブックでは、家庭用の家具について、器具の効果を次のように分けています(◎:効果が高い、○:効果がある)。
| 器具 | しくみ | 家庭用家具への効果 | 注意点(ハンドブックより) |
|---|---|---|---|
| L型金具 | 家具と壁を木ネジやボルトで固定 | ◎(スライド式は○) | 壁に強度が必要 |
| プレート式 | 家具と壁にネジ止めした金具を、金属プレートで結ぶ | ◎ | − |
| 2段分離家具用の連結器具 | 上下に分かれる家具をつなぐ | ◎ | − |
| ベルト式・チェーン式 | 家具と壁にネジ止めした金具をベルトやチェーンで結ぶ | ○ | 壁に強度が必要 |
| ポール式(突っ張り棒) | ネジを使わず、家具と天井のすき間に突っ張る | ○ | 天井に強度が必要 |
| ストッパー式 | 家具の前の下にはさみ、家具を壁側に傾ける | ○ | 背の高い家具では、単独で使っても効果は小さい |
| マット式(粘着マット) | 家具の底と床を粘着させる | ○ | 比較的小さい物向け。有効期限に注意 |
東京消防庁は、震度6強の揺れを再現した実験で器具の効果を測っています。ハンドブックのまとめは次のとおりです。
- 家具をL型金具などで壁に直接ネジ固定する方法が、最も効果が高い
- ポール式などで家具の上と天井の間を固定する場合は、ストッパー式や粘着マット式を併用すると効果が高い
- マット式やストッパー式の単独使用は効果が小さい。家具の重さや奥行きによって違いはあるが、一般に大きな家具には適していない
壁に穴を開けられない場合
賃貸住宅などでネジを使えない場合について、東京消防庁のよくある質問では、穴を開けなくて済む器具を2つ以上組み合わせる方法を挙げています。たとえば、ストッパー式(または粘着マット式)とポール式を組み合わせると、L型金具と同等の効果が期待できるとしています。
ポール式とストッパー式を使うときの注意点は、ハンドブックに次のように書かれています。
- ポール式は、家具の両端の、壁側の奥に取り付ける
- 天井に十分な強度があるかを確認する(マンションのコンクリートの天井など)。強度がない場合は、家具の幅以上の板を天井側に渡して補強する
- 奥行きのない家具や、天井とのすき間が大きい場合は、ポール式は向かない
- ストッパー式は、家具の端から端まで敷く
ネジで固定する場合
L型金具などでネジ固定する場合は、壁の下地(柱・間柱など)に固定することが大切です。石膏ボードだけにネジを打っても、しっかり固定できません。
- 下地の位置は、下地探しのセンサー、専用のプッシュピン、壁をたたいたときの音などで探せる
- 木ネジは長めのものを使い、ネジの頭までしっかりねじ込む
- 家具の天板の後ろ側に、しっかりした桟がない場合は、家具の幅全体に厚さ12mm以上の板を渡してネジ止めしてから金具を取り付ける
- 上下2段に分かれる家具は、金具などで上下を連結する
ネジを締める道具の違いは、電動ドライバーとドリルドライバーの違い|家具の組み立てならどっち?で紹介しています。
選ぶ順番
その家具は、寝る場所・座る場所・出入口の近くにある?
- ある → まず置き場所や向きを変えられないか考える。
- ない → 次へ。
壁にネジを打てる?(持ち家、または管理会社・大家さんの了承がある)
- 打てる → L型金具などで、壁の下地にネジで固定する。
- 打てない → 次へ。
天井に強度があり、家具と天井のすき間は小さい?
- はい → ポール式を家具の両端の奥に付け、ストッパー式かマット式と組み合わせる。
- いいえ → 天井側に板を渡して補強するか、背の低い家具に替える・置き場所を変える。
高い階に住んでいる場合
ハンドブックは、おおむね10階以上に住んでいる場合は、倒れる・落ちる対策に加えて、家具が動く(移動する)対策も大切だとしています。大きくゆっくり揺れる長周期地震動では、テーブルやいすなど、壁に接していない背の低い家具も動くことがあるためです。
キャスター付きの家具は、ふだん動かさないものには「キャスター下皿」、ふだん動かすものには「移動防止着脱式ベルト」が挙げられています。
また、東京消防庁のよくある質問では、免震機能のあるマンションでも、熊本地震の調査で約3割の世帯で家具の転倒・落下・移動が起きていたとしています。免震マンションでも対策が必要です。
あわせて準備したいこと
ハンドブックは、家の中に**ものを置かない「安全スペース」**を決めておき、緊急地震速報を受けたらそこへ移るよう勧めています。安全スペースには、散らばったガラスなどでけがをしないよう、厚手の手袋や底の厚い履物を用意しておくとよいとしています。停電に備える道具は防災用に備えておきたい道具|ライト・ラジオ・電源で紹介しています。
自分で取り付けるのが難しい場合、東京消防庁は、工務店やシルバー人材センターなどで取り付けサービスを行っている場合があるとしています。また、区市町村の中には、高齢者や障害者のいる世帯などに器具の配布や取り付けを支援しているところがあります。対象や内容は、住んでいる区市町村に確認してください。
参照情報
以下はいずれも2026年10月31日確認。
- 東京消防庁「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」(令和6年1月発行)
- 東京消防庁「家具転対策 よくあるご質問」
