パソコン作業や勉強に使う椅子は、デザインや値段より先に、①座面の高さを自分の体に合わせられるか、②背もたれがあって背中を預けられるか、③必要なら肘掛けがあるかを確認します。厚生労働省のガイドラインでも、椅子にはこうした条件が挙げられています。座ったときに足の裏全体が床につき、背もたれに背中をしっかり当てられることが、合っているかどうかの目安です。
この記事では、厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」をもとに、ワークチェアの仕様表で見たい項目と、買う前・買った後の確認のしかたを整理します。
ガイドラインが挙げる椅子の条件
厚生労働省のガイドラインは、パソコンなどを使う作業(情報機器作業)で使う椅子について、次の条件を挙げています。
| 条件 | ガイドラインの内容(要約) |
|---|---|
| 安定・移動 | 安定していて、かんたんに移動できる |
| 座面の高さ | 床からの座面の高さを、体形に合わせて調整できる |
| 交替で使う場合 | 高さの調整がかんたんで、調整中に座面が落ちない構造 |
| 背もたれ | 適当な背もたれがある。傾きを調整できることが望ましい |
| 肘掛け | 必要に応じて、適当な長さの肘掛けがある |
このガイドラインは職場向けのものですが、厚生労働省のテレワーク総合ポータルサイトでも、在宅勤務ではダイニングチェアなどは長時間の作業に適した椅子ではないとし、可能であれば人間工学的な配慮がされた椅子を選ぶとよいと案内しています。
座面の高さ:37〜43cmの意味
ガイドラインの解説では、床から座面までの高さは、37cm〜43cm程度の範囲で調整できることが望ましいとしています。多くの人の体形に合わせられる、実用的な範囲という位置づけです。
ここで注意したいのは、この高さが実際に座って、クッションが2〜3cm沈んだ状態の高さだという点です。ガイドラインは、市販の椅子のカタログに書かれた座面の高さは、ふつうクッションが沈んでいない表面の高さなので注意が必要だとしています。
つまり、仕様表で「座面高 40〜50cm」と書かれていれば、座ったときはそれより少し低くなると考えておきます。小柄な人は、いちばん低くしたときの高さが十分に低いかを確認しましょう。
調整範囲で合わない場合は、ガイドラインでもフットレスト(足台)を使うなどの対応が望ましいとしています。
座ったときの目安
ガイドラインでは、座って作業するときの基本の姿勢を次のように説明しています。
- 椅子に深く腰かけて、背もたれに背中を十分に当てる
- 靴(履き物)の足の裏全体が床につく。届かない場合は、十分な広さがあり、すべりにくい足台を使う
- 椅子の座面と、太ももの膝側の裏との間に、手の指が入るくらいのゆとりがある(太ももに無理な圧力がかからない)
お店で試せるなら、この3つを確認します。通販で買う場合は、届いたらまず高さを調整して、この姿勢がとれるかを確かめましょう。
机の高さとの組み合わせ
椅子だけを合わせても、机が高すぎたり低すぎたりすると姿勢がくずれます。ガイドラインの解説では、高さを変えられない机なら、床からの高さはおおむね65cm〜70cm程度が望ましいとしています。高さを変えられる机を使う場合は、先に椅子の高さを合わせてから、机の高さを合わせるとよいとしています。
机が高すぎて椅子を上げると足が床に届かない、という場合は、椅子を机に合わせたうえで足台を使う方法があります。
ノートPCは画面とキーボードが一体なので、画面の高さと手元の高さを両方合わせるのが難しくなります。ガイドラインでも、ノート型の機器は机と椅子の組み合わせや調整が、長時間作業の疲れを減らす大事な要素になりうるとしています。画面を上げる方法はノートPCスタンドの選び方|高さ・角度・携帯性、モニターの高さの調整はモニターアームの選び方|机の厚さ・モニターの重さ・VESA規格で紹介しています。
仕様表で見る項目
ワークチェアの仕様表では、次の項目を確認します。
| 項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 座面高(調整範囲) | いちばん低いときの高さ。座ると数cm沈むことも考える |
| 高さ調整の方式 | 座ったまま操作できるか(レバー式など) |
| 背もたれ | 背中を預けられる高さ・形か。傾き(リクライニング)を調整できるか |
| 肘掛け | 必要かどうか。高さを変えられるか、机に当たらないか |
| 脚・キャスター | 安定しているか、床に合うキャスターか |
| 座面の幅・奥行き | 深く座ったとき、膝の裏に当たらないか |
肘掛けは、机の天板に当たると椅子を机に近づけられず、かえって前かがみになることがあります。机の高さと肘掛けの高さも見ておきましょう。
選ぶ順番
座面の高さを調整できる?
- できない → 長時間の作業には合わせにくい。調整できるものを候補に。
- できる → 次へ。
いちばん低くしたとき、足の裏全体が床につく?
- つく → 次へ。
- つかない → もっと低くなる椅子を選ぶか、足台を用意する。
深く座って、背もたれに背中を当てられる?
- 当てられる → 肘掛けが机に当たらないかを確認して決める。
- 当てられない → 座面の奥行きや背もたれの形が合っていない。別の椅子も比べる。
椅子だけで解決しないこと
ガイドラインは、座りっぱなしではなく、ときどき立って作業することが望ましいとしています。また、連続した作業が1時間を超えないようにし、次の作業までに10〜15分の休みをとることなども挙げています。体に合った椅子を選んだうえで、休憩もはさみましょう。
デスク周りをいっぺんにそろえず、困っていることから順に見直す考え方はデスク周りは、一度にそろえない。不便をひとつ減らす道具選びで紹介しています。
参照情報
以下はいずれも2026年10月22日確認。この記事では特定の商品はおすすめしていません。座面の高さなどの数値は、ガイドラインが示す目安です。
- 厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて」(令和元年7月12日、令和3年12月1日一部改正)
- 厚生労働省 テレワーク総合ポータルサイト「テレワーク勤務(特に在宅勤務)の場合、自宅の執務環境をどのように整えればよいでしょうか。」
- 厚生労働省「自宅等においてテレワークを行う際の作業環境を確認するためのチェックリスト(労働者用)」(Excel)
